ヘリテージ~受け継ぐべきもの

日本の宝を未来に遺すために今すべきこととは

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これからの世代に残したいもので最初に思いついたのは世界遺産だった

世界遺産は私たちが過去から受け継ぎ、未来へ残すべき大切な宝です。 そこで世界文化遺産についてまとめてみました。
世界遺産には文化遺産と自然遺産と複合遺産があります。日本では慣例的に自然遺産を世界自然遺産と呼び、文化遺産を世界文化遺産と呼んでいるようです。

世界遺産とは

「1972年、ユネスコ総会で採択された『世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約』(世界遺産条約)に基づいて世界遺産リスト(世界遺産一覧表)に登録された、文化財、景観、自然など、人類が共有すべき顕著な普遍的価値を持つ物件のことで、内容によって文化遺産、自然遺産、複合遺産の3種類に分けられます」。建物や記念物、遺跡などは「文化遺産」地形や地質生態系などは「自然遺産」両方の性質をもったものは「複合遺産」となります。2023年10月現在、世界遺産は文化遺産933件、自然遺産227件、複合遺産39件の計1,199件が登録されています。

世界遺産の登録までの手続き

世界遺産に登録されるには、21か国の委員国で構成される「世界遺産委員会」での決定が必要となります。そのために、いくつもの手続きや調査が必要となります。

「世界遺産暫定一覧表」を世界遺産委員会へ提出 

2023年現在、世界遺産条約締約国は195か国あります。条約締約国は、国内の世界遺産登録を目指す世界遺産暫定リストを作成し、世界遺産委員会へ提出します。

国内での手続き
  1. 推薦書準備作業
    暫定リストは、文化庁文化審議会世界文化遺産部会によって作成された「世界文化遺産に推薦する資産を選定する基準」を基に作成されます。
    (総論)
    1.以下の観点から顕著な普遍的価値を持つ可能性が高く、その保存と活用の施策を万全にする素地が整っており、かつ、過年度の世界文化遺産部会において示された課題への対応に十分な進捗が見られること。
    (比較分析・評価基準)
    2.学術的調査の成果により、人類全体のための遺産として世界又は東アジアの観点から高い価値を持つ可能性が高いこと。また、『世界遺産条約履行のための作業指針』が示す(i)から(vi)の評価基準のうち、適切な評価基準が選択されていること。
    (真実性)
    3.主張する価値及びそれを証明する構成資産の特性に照らして、真実性が担保されていること。
    (完全性)
    4.完全性の観点から、主張する価値を証明するのに過不足ない構成資産及び資産範囲であること。さらに、資産に対する潜在的な脅威が適切に認識され、有効な対策が示されていること。
    (資産保護)
    5.原則として文化財保護法に基づく指定・選定により、構成資産が十分な保護措置を受けていること。
    (周囲の環境保全)
    6.資産周囲の良好な環境を保全・形成するための施策が講じられていること(例えば遺産影響評価の仕組み導入、歴史的風致維持向上計画や文化財保存活用地域計画の策定など)。
    (管理体制)
    7.上記5及び6の取組を実現するための包括的保存管理計画が策定されていること。また、関係自治体・関係部局の盤石な連携体制が構築されており、将来にわたりその取組・体制を継続・発展させていくことが明言されていること。
    (地域コミュニティ)
    8.地域コミュニティを含む関係者の一体的な協力体制が構築されていること。
    (地域活性化)
    9.来訪者管理戦略や情報提供戦略等に基づいて、地域が主体となった資産の活用策が講じられていること。
    (持続可能な発展)
    10.将来にわたって資産保護と地域の持続可能な発展との両立が期待できること。 
    文化庁文化審議会世界文化遺産部会「世界文化遺産に推薦する資産を選定する基準」より引用
  2. 推薦の決定
    自然遺産については環境省、文化遺産については文化庁(文化審議会世界文化遺産部会)が中心となり原案をまとめ、世界遺産条約関係省庁連絡会議(外務省)により推薦を決定し、閣議了解を経て、政府として推薦が決定されます。
  3. 世界遺産委員会へ推薦書正式版を提出

国際記念物遺跡会議(ICOMOS)による審査

推薦書を提出すると、諮問機関であるICOMOS(国際記念物遺跡会議)またはIUCN(国際自然保護連合)による現地調査・書類審査・評価の審査を受けることになります。

登録の可否については、諮問機関が以下の4つの区分で勧告を行い、それを踏まえて最終的には世界遺産委員会において決定します。
(ア)記載 : 世界遺産一覧表に記載するもの
(イ)情報照会 : 追加情報の提出を求めた上で次回以降に再審議するもの
(ウ)記載延期 : より綿密な調査や推薦書の本質的な改定が必要なもの(再度イコモスの審査を受ける必要があるもの)
(エ)不記載 : 記載にふさわしくないもの

ユネスコ世界遺産委員会で登録の可否を決定

21か国から成る世界遺産委員会において価値や保存管理体制が認められれば登録が決定します。

世界遺産の登録基準について

世界遺産に登録されるには以下の登録基準に一つ以上あてはまらなければなりません。

(i)人間の創造的才能を表す傑作である。
(ii)建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
(iii)現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
(iv)歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
(v)あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)
(vi)顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
(vii)最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
(viii)生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
(ix)陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。
(x)学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。

上記基準(i)~(vi)で登録された物件は文化遺産、(vii)~(x)で登録された物件は自然遺産、文化遺産と自然遺産の両方の基準で登録されたものは複合遺産とします。
(参考:日本ユネスコ協会連盟HPより引用)

上記全ての基準を満たす世界遺産は今のところありません。文化遺産では6項目全てが適用された物件は莫高窟(中国)、泰山(中国)、ヴェネツィアとその潟(イタリア)の3件のみです。また、自然遺産で4項目全てが適用された物件は、バイカル湖(ロシア)、カムチャツカ火山群(ロシア)、雲南三江併流の保護地域群(中国)、グヌン・ムル国立公園(マレーシア)、グレート・バリア・リーフ(オーストラリア)、タスマニア原生地域(オーストラリア)、クイーンズランドの湿潤熱帯地域(オーストラリア)、西オーストラリアのシャーク湾(オーストラリア)、テ・ワヒポウナム-南西ニュージーランド(ニュージーランド)、イエローストーン国立公園(アメリカ)、グランド・キャニオン国立公園(アメリカ)、グレート・スモーキー山脈国立公園(アメリカ)、クルアーニー/ランゲル-セント・イライアス/グレーシャー・ベイ/タッチェンシニー-アルセク(アメリカ、カナダ共通)、タラマンカ地方-ラ・アミスター保護区群/ラ・アミスター国立公園(コスタリカ、パナマ共通)、リオ・プラタノ生物圏保護区(ホンジュラス)、ガラパゴス諸島(エクアドル)、サンガイ国立公園(エクアドル)、カナイマ国立公園(ベネズエラ)、メイ渓谷自然保護区(セーシェル)、ンゴロンゴロ保全地域(タンザニア)の20件あります。

文化遺産の種類

文化遺産については以下の分類があります。

記念物(記念工作物)

「建築物、記念的意義を有する彫刻及び絵画、考古学的な性質の物件及び構造物、金石文、洞穴住居並びにこれらの物件の組合せであって歴史上、芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの(文化遺産 (世界遺産) 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)」と定義されます。少しわかりにくいですね。そこで日本での文化遺産について調べてみると下記のような記述がありました。

日本における記念物の扱い(文化財保護法第2条第1項第4号より)

「貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとって歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとって芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高い遺跡、名勝地、動植物および地質鉱物を「記念物」としています。」

これを見ると、お寺などの庭園などは記念物の扱いになるようです。

建造物群

「独立し又は連続した建造物の群であって、その建築様式、均質性又は景観内の位置のために、歴史上、芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの(文化遺産 (世界遺産) 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)」と定義されます。
日本では法隆寺地域の仏教建造物、姫路城など多くの建造物が世界遺産に登録されています。

遺跡

「人工の所産(自然と結合したものを含む。)及び考古学的遺跡を含む区域であって、歴史上、芸術上、民俗学上又は人類学上顕著な普遍的価値を有するもの(文化遺産 (世界遺産) 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)」と定義されます。
この分類の代表として、クンタ・キンテ島と関連遺跡群(ガンビア)、キルワ・キシワニとソンゴ・ムナラの遺跡群(タンザニア)、フィリピン・コルディリェーラの棚田群などがあげられています。

自然遺産の種類

自然美    

世界遺産登録基準(vii)に当てはまるものがこれに当たります。

日本の自然遺産では「屋久島」がこれにあたります。

地形・地質

世界遺産登録基準(viii)に当てはまるものがこれに当たります。

日本の自然遺産では今のところこれに当てはまる自然遺産はありません。

生態系  

世界遺産登録基準(ix)に当てはまるものがこれに当たります。

日本の自然遺産では「知床」「白神山地」「小笠原諸島」「屋久島」がこれにあたります。

生物多様性    

世界遺産登録基準(x)に当てはまるものがこれに当たります。

日本の自然遺産では「知床」「屋久島」がこれにあたります。

日本の世界遺産

日本では2023年10月現在、文化遺産20件、自然遺産5件の計25件登録されています。複合遺産の登録はありません。ちなみに無形文化遺産については世界遺産とは扱いが違います。2018年に登録された来訪神などは無形文化遺産で、世界遺産とは扱いが違いますので、ここには含まれません。無形文化財の扱いについては2003年にユネスコで採択されたようです。
今後まだまだ増えていくと思われます。また、登録されても、登録基準を満たさなくなったものは削除されることもあります。
世界遺産に限ったことではありませんが、歴史的建造物や美しい自然は次の世代に、そしてまた、その次の世代へとずっと残していきたい地球の財産であると思います。