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音楽の保存と媒体の変遷

レコード
レコードを眺めていてふと思いました。「昔はレコードだったんだよな~」 最近はサイトからダウンロードして聞くことが多くなった音楽。その歴史について簡単に紹介します。

音楽っていつからあるのでしょう

実はいつから人類が音楽というものに触れてきたのかは正確には分かりません。ただ、43000年前の中期旧石器時代の「ネアンデルタール人の笛」と呼ばれるものが発見されているので、それよりもっと前から人類は音楽と関わってきたのでしょう。赤ちゃんは生後すぐ耳は聞こえ、音に敏感に反応することがあります。そう考えると、人類の誕生と音楽の誕生は一緒と考えても良いのかもしれません。ちなみに、世界最古の歌として知られているものは1950年代のはじめ、現在のシリアのウガリットで発掘された粘土板に彫られていたもので、世界最古の音譜として約3400年前のものだと言われているようです。

音を保存するようになったのはいつからでしょう

音を最初に保存したのは1857年、フランスの印刷技師エドアード・レオン・スコットが発明した、音を波形として残すものでした。しかし、音を再現できるところまではいかなかったようです。音として保存できるようになったのは、1877年、トーマス・アルバ・エジソンによって、録音・再生ができる録音装置が発明されてからです。ただし、これは盲人を補助するための機器として考案したもので、音楽を再生する用途は考えていなかったようです。
日本ではこれを蓄音機と呼びました。

音楽を保存する媒体の移り変わり

1877年にトーマス・エジソンが蓄音機を発明するまでは、生で聴くか自分で奏でることで音楽を楽しんでいました。レコードの最初は錫箔を巻いた円筒式レコード、後に蝋(ろう)管式になり、さらにエミール・ベルリナーにより現在の形の円盤式レコードへと改良されました。
レコードが登場すると、音楽を保存して家庭で楽しめるようになり、その保存媒体は時代と共に変化しつつあります。

レコード

蓄音機やレコードプレーヤーで再生します。蓄音機は電気信号を使わずに録音した(振動を記録する)ものを再生し、レコードプレーヤーは電気信号に変えたものを再生します。
再生機器や回転数などにより、レコードにはいくつか種類があります。

SP盤(シェラック盤・Standard PlayingまたはStandard Play)


直径がほぼ8、10、12インチのものがあり、直径の規格が精密に決まっていないため、わずかなばらつきがあるようです。モノラル記録で標準の回転速度は78回転、片面の演奏時間はおよそ2~5分程度となります。蓄音機により再生します。SPレコードは1955年頃まで製造されていました。LP盤やEP盤の登場により姿を消していきましたが、今でもファンは多くいるようです。最近ではカートリッジと針をSPレコード用に交換すればレコードプレーヤーでも再生できるようでうす。この場合78RPMが回せるレコードプレーヤーが必要です。

LP盤(long playing)


素材がポリ塩化ビニールで、それ以前のレコードと同等のサイズで長時間再生できる(直径12インチで収録時間30分)ので、LP (long play) と呼ばれました。回転数33回転3分の1(実際には3分100回転)でレコードプレーヤーで再生します。

ドーナツ盤


直径7インチで収録時間5~8分。45回転のビニール盤で、穴が大きいためドーナツ盤と呼ばれました。これはオートチェンジャーで1曲ずつ連続演奏する用途を想定して企画されました。
※LPと同じ大きさの中心穴がついたものもあったようです。

EP盤(extended playing)


収録時間がLPよりは短く、シングルよりは長い「Extended Play」を略してEP盤と呼びます。45回転7インチのビニール盤で片面7分以上に演奏時間が延長されています。
※ドーナツ盤と混同されることが多く、またドーナツ盤を含めて45回転盤をEPと称する場合もあります。

ソノシート


ごく薄い塩化ビニールのフィルムでできていて、音質はかならずしも良くないですが、大幅に安価で制作できるため、雑誌の付録などに使用されていました。

その他


VG盤 variable gradeや12インチシングルなどもあります。

磁気テープ

磁気テープはドイツから世界へ広まりました。アナログとデジタルがあり、オーディオ用、ビデオ用、データ/コンピュータ用などがありますがここではオーディオ用について説明します。

オープンリール


高速・大容量の記録ができるため音質に優れ、音源の頭出しがわかりやすく、テープを直接切って繋ぐ編集が容易であるなど操作性に優れていました。レコード用の音源録音は基本的にアナログオープンリールで行われていましたが、PCMデジタル録音が開発・普及されてからはデジタル方式が採用されるようになりました。最近では、家庭ではほとんど使われず、業務用も過去の録音素材を再生するのが主体となっています。

コンパクトカセット


オープンリールに対し、1950年代以降、録音テープを扱いやすくするため、カセットに納めた状態の規格が数多く考案されました。そんな中、1965年にフィリップスが互換性厳守を条件に基本特許を無償公開したため、多くのメーカーの参入を得て事実上の標準規格となったのがフィリップス社の開発したコンパクトカセットです。一般的にカセットテープと呼ばれているのは実際はコンパクトカセットの事です。
カートリッジ式の磁気テープ再生装置として「8トラック*1」もありましたが、これに関しては再生専用に特化した傾向が強く、あまり普及しませんでした。

レコードは何度も聞くと摩耗して劣化してしまうため、レコードを購入した時は、レコードに比べて安価で、扱いやすいこともあり、カセットテープにダビングして音楽を聴いていました。その後、カセットテープの性能は向上し、1970年代には、クロムテープやフェリクロムテープ、そして、メタルテープが登場、それと共に、録音メディアとしてカセットが一気に普及し、パッケージや本体ラベルのデザインにもこだわるようになりました。

ウ ォークマン

1979年にソニーが発売したポータブルカセットプレーヤーです。好きな場所で音楽を聴くことができるリスニングスタイルで、爆発的なヒットをしました。ウ ォークマンの登場でカセットテープもブームを加速させました。

光ディスク

デジタル情報を記録するためのメディアで、取り扱いの便利さ、大量生産の容易さ、製造コストの安さなどで普及、レコードはCDへ、カセットテープはMDへと移行していきました。レコードは、レコード針の機械的な接触によって再生されるため、摩耗してしまいます。これに対し光ディスクの寿命は劇的に伸び、ノイズが少ないクリアな音を楽しむことができるようになりました。

コンパクトディスク


CD

1982年、最初のCDが発売されましたが、それまでの生産ラインがレコードとは異なるため、最初は各社反対していましたが、2年後にはCDの売り上げがレコードを上回るようになりました。また、家庭でもCDの書き込みができることで、一層需要は高まったと言えるでしょう。MDに比べて音質が良いことから、コンパクトを追求するときはMD、音質を追求するならCDと使い分けている人も多かったと思います。

MD(Mini Disk)

MD
1992年、カセットテープの代替えとなるMDが登場すると、録音メディアの主流がMDに移行し、2000年頃からポータブルMDプレーヤーなどの小型化が進み、安定した高音質やランダムアクセスによる容易な選曲などの使い勝手の良さで、レコードやカセットテープは姿を消していきました。

デジタルオーディオプレーヤー

1998年に発売した「mpman」。著作権など様々な問題を抱える中でのMP3プレーヤーでしたが、一部のオーディオマニアのアイテムでした。2001年「iPod」が発売されると、音楽はダウンロードして持ち歩く時代が到来。インターネットを介した音楽供給は音楽を保存した媒体を必要としなくなりました。

レコードやカセットの復古

レコードプレーヤー

面白いもので、最近なぜかレコードやカセットテープが売り上げを伸ばしているようです。それはなぜか私なりに分析してみました。生で聴く音楽にノイズはつきものです。それに比べて音だけを追求した現在の音楽配信は味気のないものととらえる人もいるのではないでしょうか。確かにきれいで、実際に近い音を聞くことはできます。でもそれは現実にはあり得ない音で、温かみにかけるのかもしれません。演奏者の息遣いや周りの空気感が伝わりにくいのかもしれません。そこで、ぬくもりのあるアナログ復古の兆しが現れているのではないでしょうか。

*1:カーオーディオのほか、日本ではカラオケ装置での音楽再生や、バスの車内放送など業務用途に用いられていました