昭和新山について
約2万年前洞爺湖をかたちづくる洞爺カルデラの南麓に有珠山が形成されました。有珠山は、その後何度も噴火を繰り返し、約7千年前山体崩壊が発生し、その際南側に口を開けた直径約1.8 kmの馬蹄形カルデラが形成されました。数々の噴火を繰り返した有珠山の歴史の中で、1944年~1945年の噴火が昭和新山の誕生となります。壮瞥町の東九万坪と呼ばれる地域で次第に地盤が隆起しはじめ、もとは標高100 m あまりの台地だったところが、潜在ドームの形成により250 m ほどの山となり、火口から溶岩ドームが現れ始めました。この潜在ドームと溶岩ドームは成長を続け、標高は400 m を超えました。この新山は田中館秀三*1により昭和新山と名付けられたのです。
噴火当時は第二次世界大戦の最中であり、世間の動揺を抑えるために噴火の事実は伏せられ、公的な観測を行うことはできませんでした。ところが、1943年12月末の有感地震から、火山活動の記録を私的に定点観測を続けた人物がいました。三松正夫さんという、当時の地元の郵便局長です。後に「ミマツダイヤグラム」と命名され、貴重な資料として評価されています。
三松正夫さんと昭和新山
三松正夫さんの像は三松正夫さんが愛した昭和新山に観測器具を構えるようにして建立されています。
昭和新山は私有地です
じつは昭和新山は三松家の私有地なんです。世界的にも珍しい私有地にある火山で、1951年に国の天然記念物に指定され、1957年には特別天然記念物にも指定されています。
三松正夫さんは1946年、山になってしまった土地を買い取りました。「山を守りたかったこと」「家や農場を失った住民の生活の支援のため」という理由が一般的に言われています。
「ミマツダイヤグラム」
1943年12月28日の活動開始から1945年9月まで600日余りの日時で、406.9mの昭和新山が誕生していく過程を定点観測し、その全過程を、スケッチ画をもとにまとめたものを「新山隆起図」として、1948年のオスロでの世界火山会議において報告しました。この図はのちに「ミマツダイヤグラム」と命名され、世界でも貴重な火山活動の記録となりました。
もともと三松さんは壮瞥町で郵便局員をしていました。1910年、有珠山が噴火。山麓に側火山となる明治新山が誕生しました。この時、現地調査に訪れた火山学者・大森房吉、今村明恒、田中館秀三らの案内役を務め、火山学への造詣を深めたようです。当時壮瞥郵便局の局長代理を務めていた三松さんは、通信確保のため徹夜で勤務していたということです。この経験が「ミマツダイヤグラム」の基となっていたのでしょう。
昭和新山の現在
形成当初の標高は400メートルを超えていましたが、それが温度低下や浸食などの影響で、398mまで縮んでいるようです。山麓には1988年4月開館の三松正夫記念館があります。館長の三松三朗さんは、三松正夫さんと出会い、彼の火山への思いを知り、三松家を継いでいます。
昭和新山の見どころ
昭和新山の駐車場に車を停めて階段を登っていくと「昭和新山野外博物館」という看板が立っています。遊歩道になっています。昭和新山の自然を感じてみてください。
三松正夫記念舘
昭和新山を知るには欠かすことのできない場所です。昭和新山の生成過程を記録した貴重な資料が展示されています。
- 住所
- 〒052-0102 北海道有珠郡壮瞥町昭和新山184−12
- Google マップ
- 電話番号
- 0142-75-2365
- 営業時間
- 夏期 8:00~17:00
- 冬期 8:00~16:00
- 料金
- 大人 300円/小人 250円
昭和新山パークサービスセンター
昭和新山や有珠山のなり立ち、洞爺湖周辺の自然をレーザーディスク映像で紹介するなどの自然保護施設です。 無料休憩所としても利用できます。
- 住所
- 〒052-0102 北海道有珠郡壮瞥町字昭和新山188-5
- Google マップ
- 電話番号
- 0142-75-2241(一般財団法人自然公園財団 昭和新山支部)
- 営業時間
- 8:30~17:00
- 料金
- 無料
有珠山ロープウェイ
昭和新山から有珠山山頂までを結ぶロープウェイ。山頂展望台からは洞爺湖や昭和新山が一望できます。施設内にはお食事や軽食、売店もあります。
洞爺湖有珠山ジオパーク火山村情報館
この一帯に暮らす人たちは「火山と共に活きる」ため、様々な知恵や工夫を凝らしています。パネルや噴石を展示し、洞爺湖周辺の自然を紹介しています。
- 住所
- 〒052-0102 有珠郡壮瞥町字昭和新山184-5
- 電話番号
- 0142-75-2401(有珠山ロープウェイ)
- 営業時間
- 8:15~17:45(変動あり)
- 料金
- 無料
昭和新山クマ牧場
蝦夷ヒグマを餌付けして飼育展示しています。年齢でグループに分けられた熊たちが間近に見られます。
ヒグマに関してはこちらの記事で紹介しています。
北海道遺産に認定「昭和新山国際雪合戦大会」
毎年2月に北海道壮瞥町で開催されている雪合戦の国際大会です。
停滞する閑散期の地域経済を活性化させることを目的に、『雪』を活用し、全く新しい地域づくりに挑戦しようと、東南アジアからの観光客が雪と遊ぶ姿をヒントに、「昔の雪遊びの楽しさを現代に再生しよう」と雪合戦をイベント化するアイデアが浮上し、昭和新山国際雪合戦が誕生しました。
ルールを組み立て1989年2月に第1回昭和新山国際雪合戦大会が開かれました。参加者や来場者は年々増加していき、各地で予選を行うまでになりました。
今では北欧など海外でも「YUKIGASSEN」が開かれ、国際的な競技となっています。
*1:日本の地質学者・火山学者
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