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世界遺産(文化遺産)「白川郷・五箇山の合掌造り集落」(平成7年記載)

白川郷・五箇山の合掌造り集落

 

登録された文化遺産は3カ所(岐阜県の白川村荻町、富山県の平村相倉、上平村菅沼)の山村集落からなり、合掌造りの家屋は、豪雪地域という厳しい自然環境と伝統的な生活形態によって生まれたもので、3集落にはこれがまとまった形で残り、日本でも他の地域に見られない独特の集落景観をなしています。

登録基準(4)(5)
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
・この基準の適用理由は、これらの集落が「その環境や社会的・経済的存在理由に完璧に適応した伝統的集落の顕著な例」ということによる。
(5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
・こちらの基準の適用理由は、1950年代以降の日本の急速な変化の中でも残存したという点で「彼らの長い歴史の精神的・物質的証拠を保存している」ということである。

白川郷・五箇山の合掌造り集落 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

(遺産面積および緩衝地帯面積:ha)

  遺産面積 緩衝地帯I種面積 緩衝地帯II種面積
岐阜県白川村荻町 45.6 471.5 35,655
富山県平村相倉 18.0 3,863.6 9,406
富山県上平村菅沼 4.4 9,477
合計 68.0 4,335.1 54,538


白川郷・五箇山の合掌造り集落は、日本のどの地方にも見られない極めて特異な形態であり、また、日本で最も発達した合理的な民家の1つの形態であるといえます。というのも、他の地方の農家に比べて規模が大きく、屋根は勾配が60度近くもある急傾斜(通常は45度くらい)の茅葺きの切妻屋根であり、自然への対抗手段としてのイメージが強いことと、小屋内を2〜4層として、養蚕の作業場や桑の葉の収納場所などとして積極的に利用しているという事です。荻町、相倉、菅沼の3集落は、ほとんど消滅してしまった合掌造り集落のなかで、かっての集落景観を残すわずかな集落の全部です。そしてこの三つの集落はそれぞれ、規模の大きな集落、中規模の集落、小規模の集落の好条件がそろい、集落の規模の大小の多様性があったことを示す証拠であり、また、地域による相違もあり、白川郷と五箇山の合掌造り家屋を保存することは、地域により差異があったことの証拠ともなるのです。

登録内容

岐阜県白川村荻町

荻町集落は白川村の中央やや北側にあり、屋敷地と耕作地の大部分に東山麓の山林の一部を含んだ範囲で、集落の中心を南北に走る自動車道と、耕作地と屋敷地の間を網の目のように繋がりながら延びている村道で構成されています。村道は江戸時代からの形ほぼそのままで地形に応じて曲線を描きながら道幅を自在に変えているのに対し、自動車道は1890年に設けられたもので、直線的で一定の道幅の自動車道は異質な存在となり、村落景観を損ねているものの道路の開通以来、すでに1世紀以上を経ていて、この集落の歴史ともなっています。
荻町集落の伝統的建造物群(保存すべき建造物として登録されているもの)の主体をなす建築物は「合掌造り」の家屋であり、これらの合掌造り家屋に加えて、合掌造りを木造2階建に改造した家屋、非合掌造りの木造家屋、これらの附属建物である便所、板倉、ハサ小屋、宗教建築などの建築物117棟と、石造工作物の7件によって伝統的建造物群が構成されています。  保存地区内に現存する合掌造り家屋は59棟で、明善寺庫裏は一般の家屋ではありませんが、造りは合掌造り家屋と同じで、これを加えると60棟となります。附属建物は便所10棟、板倉25棟、ハサ小屋7棟、唐臼小屋3棟と、ほかに明善寺の茶室が1棟です。宗教建築は4棟(明善寺庫裏を含む)、工作物は八幡神社の石鳥居や石灯篭、本覚寺の石垣、明善寺の石段などの石造物7件、環境物件は8件です。八幡神社の境内社叢のほか、明善寺や本覚寺、和田家、長瀬家にある一位、桜、松の樹木や生け垣などのほか、集落内に巡らされている水路のうち、約550mが環境物件として保存の対象となっています。

富山県平村相倉

集落は庄川の左岸の川面よりやや高く離れた河岸段丘面にあり、保存地区はこの屋敷地と耕作地を中心とする部分ですが、集落背後のブナ、トチ、ミズナラなどの大木が生い茂り、雪持林として維持されている傾斜地の一部も含まれています。
多くの敷地は、主屋が建てられるだけの広さで、一部を除いて広い前庭を持つ家はなく、附属屋は土蔵や板倉、別棟の便所などですが、全ての家に附属しているものではなく、板倉と土蔵は火災を考慮して、居住部分からやや離れた場所に建てられています。相倉集落の伝統的建造物群の主体をなす建築物は、「合掌造り」の家屋20棟で、これらの合掌造り家屋に加えて、合掌造りを木造2階建に改造した家屋(ウスバリより上の小屋を取り除き、新たに木造の2階を増築)5棟、非合掌造りの木造家屋7棟、これらの附属建物である便所8棟、土蔵12棟、板倉7棟その他3棟および宗教建築5棟(相念寺本堂・道場正面・道場背面・地主神社本殿・拝殿)などの建築物67棟と、石造工作物の5件によって伝統的建造物群が構成されています。改造家屋と非合掌造りの木造家屋の存在は、相倉集落の家屋の形式の変化を具体的に示すものであり、現在では集落の景観に調和しているので、伝統的建造物群を構成するものとしての価値が認められています。また、工作物は地主神社の石鳥居や石灯篭などの石造物5件で、環境物件は8件です。その内容は旧火葬場、地主神社の境内社叢、旧主要道、石垣、水路、雪持林などです。

富山県上平村菅沼

菅沼集落は小規模な集落で庄川が蛇行しながら東へ流れを変える地点の右岸の、南北約230m、東西約240mの舌状に北に突出した河岸段丘面にあります。保存地区は屋敷地と耕作地で構成される平坦部の範囲です。なお、ブナ、トチ、ミズナラなどの大木が生い茂る集落背後の山腹は木の伐採が禁じられていて、雪持林として保存されています。
屋敷地それぞれの敷地は狭く、また、周囲に塀や生け垣も設けられていません。菅沼集落の伝統的建造物群の主体をなす建築物は、「合掌造り」の家屋9棟で、非合掌造りの木造家屋3棟、これらの附属建物である土蔵3棟、板倉10棟および水車小屋1棟、宗教建築(神明社の本殿覆屋と拝殿の2棟)などの建築物28棟と、石造工作物2件によって伝統的建造物群が構成されています。非合掌造りの木造家屋の存在は、菅沼集落の家屋の形式の変化を具体的に示すものであり、また、現在では集落の景観に調和しているので、伝統的建造物群を構成するものとしての価値が認められています。また、工作物は神明社の石造の鳥居と狛犬の2件で、環境物件は湧水池と神明社の社叢の2件です。

現状

伝統的な建造物である茅葺きの合掌造り家屋や、ハサ小屋、板倉などの附属屋は、1世紀前の数に比べ、荻町では80%、相倉では45%、菅沼では70%程度となっていますが、配置や形態は保存され、昔の集落の姿を十分に窺うことができます。1970年の相倉、菅沼の史跡指定や1976年の荻町への伝統的建造物群保存地区制度導入により、歴史的な集落景観や伝統的建造物群は保たれています。
伝統的な社会制度や生活慣習である、近隣の自治組織「組」やその「組」を中心として冠婚葬祭や茅葺き屋根の葺替え時などに行われる「結」や「コーリャク」などの相互扶助の慣習も残されています。
集落内の各家や資料館には古い生活用具や生産用具などの民俗文化財も豊富に保存されていて、昔の生活を知ることができます。
保存条例および保存計画に基づく保存地区の管理は、それぞれの村の教育委員会が行い、建物や耕作地、樹木等の日常の維持管理は各所有者の責任となっていますが、水路や道などの共同利用の施設の維持管理や地区内の火災予防の日常の活動などは、3地区とも近隣の伝統的な自治組織である「組」の共同作業または当番制で実施されています。  
また、それぞれの地区住民によって相倉史跡保存顕彰会および越中五箇山菅沼集落保存顕彰会が組織され、集落の合掌造り家屋と環境の保存、民俗資料の収集と展示などを目的とした活動もおこなわれています。

参考:文化遺産オンライン(文化庁)

見学施設

明善寺郷土館

住所
〒501-5627 岐阜県大野郡白川村荻町679
入館料
大人: 300円 / 小人: 100円
団体(25名以上) 大人: 240円 / 小人: 80円
営業時間
(4月-11月) 8:30~17:00 /(12月-3月) 9:00~16:00
休館日
不定休

庫裡(くり)、鐘楼門、本堂、イチイの木によって知られる、集落内の由緒ある真宗大谷派の寺院で、1748年に創建されました。囲炉裏は毎日焚き、昔ながらの火の香りを体験することができます。

白川郷田島家養蚕展示館

住所
〒501-5627 岐阜県大野郡白川村荻町字中屋2643-2
入館料
中学生以上300円、小学生以下は無料
営業時間
9:00~16:30
休館日
不定休、冬季休館:11月上旬~4月28日

村内唯一の養蚕をテーマとした展示館で、白川村内では行われなくなった養蚕の再興を試みています。白川村の養蚕の歴史や史料の展示、旧田島家移築を記録した貴重な民俗映像の放映等を行っています。

※休憩スペースもあります。

合掌造り民家園

住所
〒501-5627 岐阜県大野郡白川村荻町2499
入館料
大人: 600円 / 小人: 400円
団体(25名以上) 大人: 550円 / 小人:350円 (100名以上) 大人: 500円 / 小人: 300円
営業時間
(3-11月) 8:40~17:00 / (12-2月) 9:00~16:00
休館日
(4-11月) 無休 (12-3月) 木曜日(但し木曜が祝日の場合は前日)

白川村の使われなくなった県の重要文化財9棟を含む25棟の合掌家屋を移築・保存して作られた野外博物館で、神社やお寺本堂、水車小屋等があり、主屋は屋根裏まで見学することができます。「常設展示場」の他、「かたりべの館」「わら細工の館」「マタダテ小屋」「お休み処」「芸能の館」「山野草苑」「そば道場」「売店」があります。

 

まとめ

この地区が世界遺産に登録されてから、観光客が増え、それによる被害も少なくないようです。観光客が増え、町が活性化することは悪いことではありませんが、保存すべきものをいかに守るかは観光客の課題でもあると思います。この地区は世界遺産としては珍しく生活している人がいる場所でもあります。その生活もまた、遺産の一部だということを改めて認識したいと思います。